Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「また、連絡させてください。」


 別れ際、運転席から降りてみのりを見送っていた蓮見が、自分の車に乗り込むみのりに声をかける。


「仕事が忙しいので、なかなか会えないとは思いますが…。」


 みのりは振り返って、そう応えて会釈をし、そそくさと車に乗り込んだ。
 本当は、もうこれきりにしてほしい。けれども、蓮見の素直すぎる表情を見てしまうと本心は口に出せず、こんな予防線を張ることしかできなかった。


 急いで車のキーを回し、アクセルを踏み込む。一刻も早く、この場所を蓮見の側を離れたかった。早く、自分を解放できる一人きりの場所に行きたかった。

 運転をしながら、堪えきれずに顎が震えてくる。涙が溢れてきて視界が歪み、どうにも運転が難しくなって、みのりは車を路側帯に停めた。


「………遼ちゃん……!!」


 震える両手で顔を覆い、食いしばった歯の間からその名がこぼれ出てくる。


 みのりが自ら繋がりを断ち切ってしまったとはいえ、まだこんなにも好きでたまらない。
 心の奥底へ押し込めようとしても、忘れ去ろうとしても、みのりがそうしようとすればするほど、みのりの中の遼太郎の存在は大きくなっていく。

 蓮見のような男性に想いをかけられても、何にも増して愛しいと思い、みのりの心に住み続けられるのは遼太郎しかいないと、なおさらに思い知らされる。


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