Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
夕暮れ時に帰宅した遼太郎は、夕飯の準備をしていた母親に、早速免許証を披露した。
母親はエプロンで手を拭いて、何も言わずに免許証を手に取って見ると、微笑んでから遼太郎に返してくれた。
その場で自分の財布の中に免許証を仕舞っている遼太郎に向かって、
「いい男に撮れてるじゃないの。」
母親は鍋のふたを取りながら、口を開いた。
そう言われて、遼太郎はもう一度免許証を取り出して見てみた。こうやって自分の顔を客観的に見てみると、いい男かどうかよりも、本当に母親似だということに気が付く。
「母さん似だからだよ。」
今まで「母親似」ということを指摘されるたびに、嫌がるような素振りを見せていた遼太郎がそう言ったので、母親はびっくりして菜箸を持ったまま振り返った。
「お陰様で、無事に免許もとれたし、母さん、本当にありがとう。」
きちんと頭を下げる遼太郎に、母親はさらに驚いて、呆気にとられて口をぽかんと開けた。
これまで、親のしてくれることは当然とばかりの態度しかとってこなかった遼太郎だったから、それも無理はない。
けれども母親は、遼太郎の感謝の言葉をしっかりと噛みしめて、一息ついて言葉を返した。
「これからは、学費と生活費だけは出してあげるけど、あとのことは全部自分で何とかするのよ。それから、お父さんにもちゃんとお礼を言ってね。」