Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
遼太郎はひとまず落ち着いて、コーラをゴクゴクとのどに注いだ。
駅からここを捜し当てるまで、優に30分は歩いている。夕方とはいえ、まだ強い日射しの夏の太陽に照り付けられ、遼太郎の喉はカラカラだった。
樫原は上下に動く遼太郎の喉仏をうっとりと眺めていたが、その向こうのフロアにいる数人の女の子に気が付いて手を振った。遼太郎も振り返って、樫原の視線の先を確かめる。
「……知り合い?」
「え!狩野くん、忘れたの?環境学部で同じクラスの女の子じゃない。一緒に遊びに行ったりしたでしょ?」
「…え、そうだったっけ?」
樫原にそう言われても、遼太郎は、もう夏休みに入ったというのに、大学の女の子の顔はほとんど覚えていなかった。
同じような髪の色と形、似たような服装をしていて、遼太郎の目には判で押したように皆同じに見えてしまう。
「きっと、晋ちゃん目当てで来てるんだよ。」
それを聞いて、遼太郎は納得した。
この数か月、樫原が『晋ちゃん』と呼ぶ佐山と一緒にいて、彼がモテることを目のあたりにしている。
高3の時、同じクラスだった平井もとにかくモテていたが、佐山は平井のように、ただ〝顔がいい〟というわけではないらしい。内側から滲み出るような、なんとも言えない魅力がある。中学生の頃からバンドをやっていて、何よりも感性を磨いてきている。