Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
自分は顔も覚えていない女の子なのに、自分の名前を知っていることが気持ち悪い。
「…え、いや、聞いてない。」
遼太郎は肩をすくめて、首を横に振る。あまりにも素っ気なくすると女子の反感を買いそうなので、それはそれで怖い。
「晋ちゃんがいろいろお店知ってるから。前に『シモキタは俺の庭だ』って言ってたし。」
電話を終えた樫原が助け舟を出してくれて、遼太郎はホッと胸をなでおろした。
別に敢えて避けているつもりはないけれども、遼太郎は個人的に女の子と関わるのが苦手だった。もちろん昔から得意だったわけでもない。特に大学に入ってから男女間で隔てなく関わりを持つのが普通になると、なおさら遼太郎のぎこちなさは際立った。
それでも、気さくな女の子は、こんな遼太郎にも声をかけてくれる。
それに対していつも、ありがたいような気持ちと迷惑な気持ちが入り混じり、結局あまり乗り気でないような受け答えしかできなかった。
そんな遼太郎と女の子たちとの間を埋めてくれてたのが、樫原と佐山だった。
樫原はあの通り、自分も女子と同化できるようなタイプだったし、佐山もプレーボーイと言われるだけあって、まだ十代だというのに女の子の扱いにはソツがなかった。