Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
よくもまあ、こんな歯の浮くような言葉が出てくるものだと、遼太郎は感心する。佐山は彼女がいるのに、それ以外の女の子のご機嫌をとる必要が、どうしてあるのだろう?
「晋也!どうするんだ?メシ、一緒に行くんなら、早く行こうぜ。腹が減って死にそうだ。」
バンドのメンバーの一人が、そう言って急かしたので、佐山も肩をすくめておしゃべりをやめ、早速食事に行くことになった。
「シモキタは俺の庭」と言っていた佐山だが、バンドのメンバーと女の子たち、それと樫原と遼太郎、総勢10人もの人間が予約もなく入れる店がなかなか見つからず、佐山に引き連れられて、あちこち下北沢を放浪して回る。
空腹を抱えて歩き回り、一同の堪忍袋が破裂しそうになって、しょうがなく駅にほど近いファミレスに落ち着くことになった。
女の子たちは、佐山だけではなく他のバンドのメンバーにも興味を示し、メンバーたちも女の子と話せるのはまんざらでもないらしく、それぞれ楽しそうに会話をしながら食事をした。
しかし遼太郎は、やはりこんな場面でも女の子と接触を持とうとせず、端っこの席で黙々と食べ物を胃袋へと詰め込んだ。