Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「……遼太郎。もしかして、お前、ゲイか?」
向かいに座る佐山から、いきなりヒソヒソと囁かれる。
「……?!!」
かつて自分が佐山に抱いていた疑いを、今度は自分にかけられ、遼太郎は驚いた。ご飯を頬張る顔を上げて、佐山を凝視する。
「まさか!そんなわけないだろ!」
目を白黒させながらご飯を呑み込んで、辛うじてそう答える。
「じゃ、何で、女の子と親しくしようとしないんだ?」
佐山の質問に、何とも答えようがなく、黙って水を一口含んだ。
「…もしかして、彼女いるのか?」
追い打ちをかけるようなこの問いに、遼太郎の塞がったばかりの傷口が、ジワリと痛みだした。
まぶたの裏に、橋の上にたたずむ赤いカーディガンを着たみのりの姿が浮かぶ。
息苦しくなるのを感じながら、遼太郎は唇を噛んだ。下っ腹に力を込め、奥歯を噛みしめて、痛みと哀しみが噴出して暴れ出すのを、必死で抑え込んだ。
そして、一つ大きな息を吐いて、首を横に振る。
「彼女は……いないよ。」
この一言を絞り出す遼太郎の表情に、佐山は何かを読み取ったらしく、少し考え込むように遼太郎を観察していた。