Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 恋愛に関してはいっそのこと、佐山のように客観的に、割り切れた考え方が出来る方が楽なのだろう。もしかして、そっちの方が普通なのかもしれない。

 遼太郎自身や佐山くらいの年齢ならば、そうやって経験を積み重ねていって〝本物〟を見極める能力を養い、そして心身ともに大人になって〝本物〟を見つけ出すのだろう。


――でも、俺は初めから〝本物〟に出逢ってしまった…。


 その〝本物〟を忘れ去って、新たな〝本物〟を探すことなんて不可能だ。
 そんな思いが胸に去来するたび、遼太郎は満たされない切ない感覚に突き上げられる。


 こうやって、遼太郎の思考がみのりにばかり囚われていることこそ、みのりが一番危惧し否定したことなんだと、遼太郎自身も解っている。

 解っているけれども、みのりのいない世界は混とんとした闇に閉ざされていて、なかなかそこに一筋の光さえも見つけられないでいた。




 食べるのが遅い女の子たちを待って、遼太郎たちがようやくファミレスを出られたのは、もう10時を過ぎた頃だった。

 けれども、皆の話は尽きないらしく、その場から動き出そうとしない。樫原と佐山は、女の子たちとまだ楽しそうに話をしているし、バンドの他のメンバーたちは、もう20歳を過ぎているのだろうか、たむろしてタバコを吸っている。


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