Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「遼ちゃん。夕方からの全体練習の前に、みのりちゃんに会いに行ってみようぜ。」
遼太郎に遅れること1週間、もうすぐお盆になろうという頃、ようやく練習に顔を見せた二俣が、そう遼太郎に提案した。
みのりの名前が出てきた瞬間、遼太郎の体がピクッと硬直する。こわばらせた表情で、ゴクリと唾を呑み込んで、
「…いや、俺は会わなくてもいいよ…。」
と、ポツリとつぶやいた。
意外なこの一言に、二俣は大きな目をいっそう見開いて口を尖らせた。
「そりゃ、遼ちゃんは、帰省してから何度もみのりちゃんに会ってるだろうから?わざわざ会わなくてもいいかもしれないけど、俺だってみのりちゃんに会いてーよ。」
「会いたかったら、ふっくんが一人で会いに行けばいい。……それに、帰ってきてから、一度も先生には会ってないよ。」
「何で、会いに行かないんだよ?」
二俣の疑問も当然だ。
あんなことがなかったなら、遼太郎だって、帰省して真っ先にみのりに会いに行っている。
「……きっと、先生は座る暇もないほど忙しくしている。仕事の邪魔をしたくないんだ。」
会いに行かない本当の理由を打ち明けることが出来ず、遼太郎は取って付けたような言い訳をした。