Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 それを黙って聞いていた二俣は、深いため息を吐いて、ようやく言葉を返した。


「みのりちゃんって……、やっぱり大人なんだな……。普通の女なら、好きな人とはずっと一緒にいたいって思うもんだぜ…。」


 遼太郎は顔を上げて、二俣の真面目な顔を見つめた。

 大学生になって、子どもから卒業したと思っている遼太郎も二俣も、みのりから見れば、まだまだ子どもだということだ。


「そんなみのりちゃんを好きでい続けたいなら、遼ちゃんも覚悟がいるってことなんだろうな…。けど、その大人のみのりちゃんから本気で好きになってもらえたんだから、遼ちゃんは自信を持っていいと思うぜ。」


 励ましになっているのかいないのか……、二俣はそう言って、精いっぱい遼太郎を元気づけようとした。

 二俣はスッと立ち上がると、目の前に転がっていたラグビーボールを拾い上げて、グラウンドへ向かって思い切り蹴り上げた。

 空中に大きな弧を描いて、ボールは落ち、思ってもみない方へと転がっていく。


「花園予選の決勝戦で、遼ちゃんが最後に見せてくれたあのドロップゴール。俺はあれを見て、『さすが遼ちゃんだ!』って思ったんだぜ。俺がスタンドオフだったら、あのまま攻め続けた挙句、都留山にターンオーバーされてノーサイドだったと思う。何て言うかさ……、遼ちゃんはきっと、そんなふうに状況や物事を読んで、何かを判断したり計画したりすることに向いているんだろうな。」


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