Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
そう言って二俣はニッコリ笑うと、ボールを拾いに陽炎が立ち上る熱いグラウンドへと走り出た。
そんな二俣の後姿を見ながら、遼太郎は息の詰まるような苦しみからは、少し解放されていることに気が付いていた。
何でも前向きに考えることの出来る二俣の力をもらって、もう一度自分の足元をしっかりと見つめ直せたような気がした。
夕方からの練習が終わって、遼太郎が職員室を見上げると、もう明かりが消えて、学校はひっそりと静まり返っていた。
「お疲れ様でした。狩野先輩。」
「ありがとうございましたー。」
後輩たちが口々にそう言って帰っていく中、遼太郎も自転車にまたがり、帰途に就くことした。
ラグビーをしている無心状態ではなくなった途端、遼太郎の中には色んな思いが浮かんでは消えていく。
その中で、今日の遼太郎の心を占拠してしまったのは、やはりみのりの存在だった。
今日、目にしたみのりの机の映像が、遼太郎の思考に再現される。
見覚えのある教科書に日本史辞典。飲み残しのお茶に、走り書きでも端正で癖のない文字。
それらの一つ一つすべてに、みのりの息吹が感じられて……。