Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜




――…もしかして、もう家に帰っているかもしれない…。


 遼太郎はそう思って、決して近くはないみのりのアパートまでの道のりを、もう一度自転車で辿った。


 アパート近くの、みのりと最後の別れをした橋まで来て、まだみのりの部屋に灯りが灯っていないことを確認する。そこで、遼太郎は足を止め、遠くからアパートの窓を眺めた。

 ほんの数か月前に、あの場所で二人で過ごした時間を思い出し、意識は甘い記憶の中をしばし漂う。

 ……そしてその後、ここで、別れを告げられた…。


 その時のことを思い出して、遼太郎は現実に引き戻される。

 この時間になっても、みのりが帰宅していないのは、自分がここに来ることをみのりが予測し、会うことを拒まれているからだと覚る。


――……でも、あの別れの時、先生は俺のことを好きでいてくれたはずだ…。


 遊園地で雨宿りをした時のみのりを思い出して、その想いの深さは確かだと思う。
 ……それなのに、みのりはあの別れを切り出した。


 その時のみのりの心は、どんなにか辛かっただろう。

 敢えてその辛さの方を選んだのは、ひとえに遼太郎が人間として成長することを願ったからだ。
 みのりの中で、自分のことよりも遼太郎の方が大切な存在だったからだ。


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