Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
――今、先生に再会してどうする……?
自分はあの時のまま、何も成長もしていなければ、何も変わってもいない。
自分はあの別れにしがみついて堅い殻に閉じこもり、あの時みのりに言われたことの一つも実行していない。
――今の俺が目の前に現れて、先生はどんな顔をするだろう……?
喜ぶどころか、がっかりされて拒絶されるだろう。
みのりに見合う人間に成長して、それが誇れるようにならなければ、みのりに再会しても抱きしめることはできない。
それに気が付いた遼太郎は、キュッと唇を引き結んで、アパートに背を向けて自転車を漕ぎ始めた。
みのりを想う時、これまで幾度となく『早く大人になりたい』と思っていた。
では、どうすれば大人になれる?
それは、ただ単に歳を重ねて、大学を出て普通に就職すればいいことだろうか。……いや、そうじゃない。
みのりの隣に立っても、引け目を感じることのない、自己が確立された人間とならなければならない。
遼太郎はやっと目が覚めた。
歯を食いしばり、体を震わせながら、みのりを愛しく想う自分を抑え込んで、心に誓った。
自分自身が納得できる〝大人〟にならなければ、みのりには会いに来ないと――。