Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
夏休みが終わり、遼太郎は再び東京の喧騒の中に身を置くようになった。
遼太郎は講義が終わった後、図書館へ行き、勉強をすることを日課にしていた。それに、図書館へ行けばいろんな新聞も読める。
その日もまだ暑く、西日の射すキャンパスを、遼太郎は図書館へ向かって歩いていた。
「狩野くん!」
突然、張りつめたような声に呼び止められて振り返る。
そこにいたのは、……確か、同じクラスの茂森彩恵という女の子だ。
ただならぬ様子に何事かと、遼太郎が彩恵を凝視すると、彩恵は今度はためらうように切り出した。
「あの…、話したいことがあるんだけど、ちょっといいかな…?」
そう言うと、彩恵は、遼太郎をひんやりとした校舎の陰にまで連れて行った。ちょうどここは木立に目隠しされて、人目に付きにくい。
前にも経験したことのあるようなこのシチュエーションに、遼太郎も何かを感じ取り、心が落ち着かなくなる。
彩恵は改まって遼太郎に向き直り、伏し目がちに話し始めた。
「あのね…、佐山くんから、狩野くんは付き合っている人はいないって聞いて…。それで……。」
自分の予感が当たっていることに、遼太郎は思わず身構える。
「あのっ…私!狩野くんが好きです!…付き合ってくださいっ!!」
彩恵は頭を下げながら、思い切ったように告白した。