Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「みのりちゃん!」
清掃指導が終わり職員室へ戻る途中、生徒が多く行き交う渡り廊下で、名前を呼ばれた。今、この学校でこんな風に呼ぶのは、一人しかいない。
「ああ、愛ちゃん。元気そうね。花園予選はどう?みんな練習頑張ってる?」
昨年、兄の二俣が勝ち進んでいく過程は知っているだろうが、今年は愛にとって、ラグビー部員として初めての花園予選だ。
「はい。頑張ってると思います…。多分……。」
さぞかし愛が張り切っているとばかり思っていたみのりは、彼女の歯切れの悪い受け答えが気になった。それに、いつも目にする快活な愛の表情ではない。
「…どうしたの?心配事でもある?」
心の中を言い当てられたのだろう。愛はグッと息を呑み込んで、何と答えていいのか迷っているようだった。
「……うん。みのりちゃんだったら、相談に乗ってくれるかな?でも、みのりちゃん、忙しそうだし……。」
やはり、みのりの直感は当たっていたらしい。
よほど言い出しにくい事なのだろうか。愛は両手の指を、胸の前でもじもじと組んだりほどいたりした。
「忙しいけど、相談に乗る時間くらいはあるけど?愛ちゃんの方が、部活とかで忙しいんじゃないの?」
「明日は、試合の前日だから、部活も早く終わると思います」