Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
みのりは硬くしていた体の力を抜いて、石原の行為を受け入れる。すると、石原はそれに気が付いて、みのりの胸元から頭をもたげ、みのりの涙で濡れた顔を見下ろした。
「…みのりちゃん…?」
自分の想いが受け入れられたのかと、石原の強張った表情が緩む。
でも、石原に向けられたみのりの眼差しは、恋い慕うものではなく、憐れみを漂わせていた。
「私は石原先生を、こんなにも傷つけてしまって…。こうすることで、石原先生に償えるのなら……気の済むようにしてください。でも、奥さんと娘さんは傷つけないで。私の罪をこれ以上、重くしないで……。」
これを聞いた石原は、眉間に皺をよせ、ギュッと目をつぶった。
顎を震わせ唇を引き結ぶと、何かを振り払うかのように、みのりを組み敷いた体勢から立ち上がった。
体が自由になったみのりも、胸元を押さえながら体を起こし、長机の上から足を床に着けた。
石原は悲痛な面持ちのまま、そんなみのりの姿をしばらく見つめる。
そして、くるりと背を向けると、そのまま小会議室から出ていってしまった。
途方もない緊張感から解放されて、みのりの体に震えが駆け抜けた。わなわなとその場に座り込み、大きな息を吐く。
そのまま深呼吸して何とか気持ちを落ち着けようとするけれども、それは次第に嗚咽に変わり、みのりは声を殺して泣いた。