Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
佐山の言葉に、遼太郎よりもその場にいた他の女の子の方が反応する。
「えっ?!樫原くん、何のバイトしてるの?」
「えへへ…あのね。家庭教師♡中学生の男の子なんだけど、すっごくカワイイんだぁ~。」
その樫原の受け答えを聞いて、遼太郎は久々に虫唾(むしず)が走るのを覚えた。
すると、佐山も同じように感じたらしく、佐山は樫原の背後からその首に腕を回して、締めるふりをする。
「猛雄!お前、そんなこと言うから、ホモだって思われんだよ!!気持ちわりーから、やめろって言ってんだろ!!」
「いやーん。やめて~、晋ちゃん~。」
と、いつもと同じようにじゃれ合う佐山と樫原を見て、一同に笑いが起こった。
それから三々五々、皆は各々のこれからの目的の場所へと散っていくと、彩恵は様子を窺うように、遼太郎を見上げる。
「駅まで送っていくよ。」
遼太郎も、〝彼氏〟としての役割をちゃんと心得ていた。二人は並んで、最寄りの駅までの道を歩きはじめる。
――お似合いの二人……。
クラスの仲間内で、最初にカップルとなった遼太郎と彩恵は、皆からそう言われていた。
ただ素直に遼太郎を想い、それを隠さない彩恵と、優しい態度で彼女に寄り添う遼太郎。見た目も釣り合いが取れている二人は、誰の目にも理想のカップルのように映った。