Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
けれども、二人きりになった途端、独特の緊張感が辺りを漂い始める。
それは、付き合い始めた頃の新鮮な緊張感が尾を引いているようなものだったが、もう3か月が経とうというのに、今一つ打ち解けられない不自然さが加味されて…、何とも言い難い、極めて微妙なものだった。
この3か月の間、二人はそれなりにデートなどを重ねてきた。映画を一緒に観に行ったり、ショッピングに出かけたり、水族館に行ってみたり…。
一緒にいる時間が積み重なっても、二人の間のぎこちなさは変わらず、彩恵は何となく満たされない想いを抱え始める。
もちろん、遼太郎は彩恵のことを大事に扱ってくれている。移動する電車の中では、遼太郎が盾となって彩恵のいるスペースを作ってくれるし、レストランでは椅子を引いて先に座らせてくれる。 彩恵が遼太郎の端正な顔を見上げると、口角を上げて優しく微笑み返してくれる。
――でも…、何か違う……。
そうは思っていても、彩恵にとっても遼太郎は初めての彼氏で、男の子との付き合い方を彩恵自身も模索している状態だ。どうやって今の微妙さを打開すればいいのかなんて、当然判らなかった。
「狩野くんって、まめにメールとかしない人なの?」
沈黙に耐えられなくなった彩恵が、先に口を開く。不意に尋ねられて、遼太郎は首をかしげた。