Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
みのりが柔らかい笑顔を向けると、遼太郎はグッと息を呑み込んでから、会話を続けた。
「…でも、個別指導はやめといた方がいいと思います。」
「あら、なぜ?」
「…なぜって…。」
遼太郎は言葉を詰まらせた。
本音を言えば、みのりには誰の個別指導もしてほしくなかった。特に、男子に対しては。たとえ、それが自分の弟だったとしても。
「1、2年生の内は、余程のことがない限り、個別指導はしないとは思うけどね…。」
みのりはそう言って、質問に答えてくれない遼太郎の代わりに、そう結論づけた。
みのりは教師なのだから、自分にしてくれたように他の生徒にも接するのは、遼太郎だって分かっている。ましてや、みのりは熱心な教師で、みのりのそんなところも大好きだった。だから、こんな嫉妬のような感情は、遼太郎自身も嫌な感じがした。
遼太郎が唇を噛んだまま、黙ってしまったので、みのりも運転を邪魔しないように口をつぐんだ。
そうしている間にも、車は例の「シルクロード」の前を通り過ぎる。遼太郎はそれを横目に少し意識しながら、車を走らせ、高速道路の入り口に差し掛かった。
「狩野くん。もしかして、初めて高速道路を走るの?緊張するね…。」
そう話しかけたみのりの方が、遼太郎よりも緊張感たっぷりだ。