Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「いや、路上教習で走ったことありますし、信号ないし歩行者もいないから、逆に走りやすいです。」
ETCで戸惑うこともなく、遼太郎は事もなげにそう言った。
「あ、そうなんだ…。」
未だに高速道路を走る時には緊張してしまうみのりにとって、遼太郎はとてつもなく頼もしく思えた。それでも、やはり遼太郎に運転に集中してもらいたいのと、自分の感覚が先立って、みのりは無意識の内に無口になった。
しばらく高速道路を走った頃、遼太郎の方から口を開く。
「先生…。どうして俺のこと、『遼ちゃん』って呼ばないんですか?」
いきなりそう切り出されて、みのりの思考は固まった。
「…えっ!?」
「だって、今日は『狩野くん』に戻ってるし…。」
実を言うと、みのり自身、そのことを自覚していた。この前はそう呼べたのに、今日は変に意識してしまって、呼べなくなってしまっていた。
この前の別れ際、キスを期待していたのに、してもらえなかったことも影響している。あんな〝がっかり〟を、また味わうのはごめんだった。
「…そ、それは…、何でだろう…?」
きちんとした理由は、自分でも解らない。それをみのりは正直に言葉にした。