Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
みのりには、日々の生活で起こる些細な出来事を、どんなことでも伝えて、分かち合いたいと思う。こんなふうにラグビーに関わる嬉しい出来事だと、なおさら。
このことを聞いた時の、みのりの嬉しそうな優しい笑顔を思い描いただけで、遼太郎の心は切なく震えた。
「狩野コーチ!次、行きます!!」
元気な声をかけられて、遼太郎は我に返る。
「よし!来い!!」
遼太郎も負けずに元気な声を出して、コンタクトバッグを構え直した。
こんなふうにラグビーに関わっていると、自分の心の中の矛盾や切ない痛みも、この時だけは忘れられた。ラグビーボールを介して、子どもたちと共に、心の底から笑うことが出来た。
「できたら、またこうやって手伝ってくれたら嬉しいんですけど。」
練習が終わって帰ろうという時、吉住コーチからそう言葉をかけられた。
「こうやって…?」
脱ぎ捨てていたモッズコートを拾い上げながら、遼太郎は吉住を見つめ返す。吉住から差し出されたスポーツドリンクを、会釈をしながら受け取った。
「実は、転勤なんかでコーチがたて続けにいなくなって、困ってて…。大急ぎで新しいコーチを探していたところだったんです。」
どうりで、〝経験者〟の匂いがする遼太郎のことを、血相変えて追いかけてきたわけだ。