Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
13 誠意と愛情
「……ウソつき!!」
鋭い口調と同じ目つきで、彩恵が遼太郎を見すえた。
思ってもみなかった彩恵の反応に、遼太郎の方も目を丸くする。自分の言動の何が気に入らないのか分からず、ただ黙って彩恵を見つめ返した。
穏やかな冬の陽射しで陽だまりになっているこの場所は、大学の学生たちが待ち合わせなどに使うピロティ。カフェのようにテーブルと椅子が並べられ、昼休みは多くの学生たちが行き交っている。
その片隅で、テーブルを挟んで向かい合って座る二人の空気は、周囲の穏やかさとは対照的に、彩恵のこの一言で緊迫したものになった。
「……今度ゆっくりできるときに、私のアパートに来てくれるって言ってたのに。用事を入れちゃうなんて…!」
要するに彩恵は、日曜日に遼太郎がラグビースクールのコーチに行かねばならなくなったのが、気に入らないらしい。
「土曜日だったら、空いてるんだけど…。」
彩恵のアパートに行くのは、あまり気乗りしなかったが、この様子では一度は行かなければ収まらない雰囲気だ。
「土曜日は、ノリちゃんと『秘書検定講座』のスクールの説明会に行くことになってるの。」
休みの日に用事を入れているのは彩恵も同じなのに、一方的に遼太郎を責める彩恵の思考を、遼太郎は懸命に理解しようとする…。