Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「もし…、俺が変なこと言ったからだったら、気にしないでください。」

「変なこと?」


「…その、キスしたくなるとか…。」


 少し戸惑いながら発せられた遼太郎の言葉に、みのりの心臓は跳び上がり、その中身を言い当てられたように感じた。

 けれども、みのりはそれを素直に認めたくはない。遼太郎よりもずいぶん年上の大人の女性として、たかがキスぐらいで動揺するわけにはいかなかった。


「別に、それを気にしてるわけじゃないんだけど…。そう呼ばれるの、嫌なんじゃないかと思って…。呼ぶたびに、ピクッて、動きが止まるでしょう?」


 今度は、遼太郎の方がみのりの観察眼に、息を呑んだ。でもそれは、それだけみのりが自分の些細なことをも、ちゃんと見つめてくれているという証拠でもある。確かに、自分はみのりにそう呼ばれるたびに、思考も体も凝固していた。


「全然嫌じゃないから、そう呼んでください。」


 ハンドルを握って前を見据えながら、遼太郎はしっかりした口調で言った。


「嫌か、じゃなくて、そう呼んでほしい…?」


 改めて、みのりからそう訊かれて、遼太郎はその真意を考えた。


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