Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
もちろん、みのりにはそんなふうに呼んでほしい。そう呼んでくれるということは、みのりにとって特別になったということに他ならない。みのりの可憐な唇から、そう優しく呼んでくれるのを、意味もなく何度でも聞いていたいくらいだ。
「……はい。呼んでほしいです。」
遼太郎は視線を前方から、一瞬みのりの方へと移した。それが、遼太郎の気持ちを確認したかったみのりの視線と絡み合う。
チラリと視線をくれただけなのに、その真剣さにみのりの心臓はドキン!と射抜かれた。
「…わ、分かった…。じゃ、…じゃあ、『遼ちゃん』。」
たどたどしくみのりの口から発せられたその呼び方に、遼太郎は思わず吹き出した。
「先生。今の言い方、まるで『 』(かっこ)が付いてたみたいでしたね。」
笑われて、みのりは口を手で押さえて赤面した。「遼ちゃん」となかなか呼べなかったのは、照れくささもあったからだ。
「…そ、それじゃあ。…り、りょ、遼ちゃん…だって、私のことをずっと『先生』って呼ぶつもりなの?」
そう切り返されて、遼太郎は目を丸くした。みのりに指摘されるまで、そのことに関して考えたこともない事柄だった。
思わず遼太郎は、前を注視し、運転に専念するふりをして考えた。