Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
そんな遼太郎の心持ちとは裏腹に、街はクリスマスの色が日一日と濃くなっていく。
遼太郎が住んでいた芳野の街とは、比べ物にならないくらいのイルミネーション。東京では、特段どこかに出かけて行かなくても、芳野の街くらいのイルミネーションは楽しめた。
ちょうど1年前、芳野の街で見かけたみのりの姿が、目を閉じた遼太郎のまぶたの裏に浮かび上がってくる。
白い天使の像を見上げるみのりは、自らもまばゆい光を放っているように綺麗だった。
教師という大人の世界にいるみのりをとても遠くに感じて、あの時も好きでいることが辛かった…。
だけど、そんな幻のようなみのりを、この腕に抱きしめた。頬を撫でて愛の言葉を囁き、キスを交わした。
遼太郎の中で繰り返されるその時の感覚。もう一度その感覚をたどりたい…。
その欲求に気づいてしまうと、燃えるように体中が疼いた。
そして、この欲求を押し止めるのに相当の努力を要し、何も手に着かなくなる。
綺麗なもの美しいものが、遼太郎の目に映るたびに、胸が震えみのりを思い出す。その度に遼太郎はこの現象に侵されて苦しんだ。
今は、自分が想い守らねばならない女性は、別にいる。
それが解っているからこそ、なおさら遼太郎の苦悩は深くなった。