Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「晋ちゃん。今年のクリスマスはどうするの?彼女がいなくなって、寂しいね。」
そう佐山に尋ねたのは、樫原だ。佐山に同情するというよりも、面白がっているといった雰囲気だ。
秋が深まったころ、とうとう彼女と別れてしまった佐山だが、言い寄ってくる女の子が後を絶たないことくらい、遼太郎だって知っていた。
しかし、愛を求めてさまよう佐山は、恋愛感情が抱けない相手とは付き合ったりしない。
階段状になった大講義室の中ほど、年季の入った机に頬杖をつきながら、佐山は怪訝そうな顔を樫原へと向けた。
「今年のクリスマスは、24も25もライブがあるんだ。俺らのファンと過ごすってことだな。」
「へー、それで、ファンの中の可愛い子を、お持ち帰りしちゃうんじゃない?」
「ばっ、バカ野郎!!そんなことするわけないだろ!!」
樫原のからかいの言葉に、佐山は顔を真っ赤にして反論した。
「猛雄、お前だって、相手はいないだろ?どうなんだよ?寂しいなら、俺のライブに来てもいいぜ。」
遼太郎は話を聞きながら、樫原の「相手」とは女なのか男なのか、そっちの方が気になった。
「おあいにく様。クリスマスは家族で過ごすって、我が家では決まってるんだよ~。」
樫原のお決まりのパターンを思い出した佐山は、肩をすくめて遼太郎と目を合わせた。