Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「…狩野くんは、…やっぱり彩恵ちゃんと過ごすんだよね?何か計画してるの?」
神妙な顔をして樫原が、今度は遼太郎へと尋ねてきた。本当は佐山のことよりも、はじめから遼太郎のことを訊き出したかったようだ。
佐山もそれは気になっていたらしく、樫原と同じ面持ちで遼太郎を見つめた。
遼太郎はキュッと唇を噛むと、意を決したように一つ息を吐いた。
「…実は、ラグビースクールの合宿があって、同行しなくちゃいけないんだ…。」
「……え。」
状況を察して、樫原と佐山が言葉を逸する。
この前の彩恵のワガママぶりでは、一波乱ありそうな様相だ。容易にそれが想像できる二人は、何とも遼太郎に言葉をかけられなかった。
そうしている内に時刻が迫り、大講義室の教壇に教官が登壇した。前に向き直り、ノートを広げる遼太郎に、佐山がヒソヒソと囁きかける。
「これも、お前の言う『試練』なのかもな。…頑張れよ。」
佐山が予想した通り、時間をおかずにその「試練」は、容赦なく遼太郎に襲い掛かった。
明日から冬休みという寒い日、講義が終わって、遼太郎は彩恵から一緒に帰ることを持ちかけられた。
クリスマスまで、あと10日。その時が来たと覚悟を決め、日課にしている図書館通いをやめて、彩恵が利用する駅までの道を共にした。