Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「クリスマスは一緒にいられない。ラグビースクールの合宿があって、それに行かなきゃならない。」
「……。」
クリスマスを心待ちにして晴れ渡っていた彩恵の顔に、影が差す。遼太郎を見上げる彩恵の眼差しが、少しずつ険しくなっていく。
「……初めて二人で過ごすクリスマスだから、楽しみにしてたのに…。それ、断れないの?」
「…うん。他に参加できるコーチも少ないらしくて、今から断ると迷惑かけるし…。」
彩恵は遼太郎から視線を外し、周囲の遊具や木々に目を走らせてから、足元を見つめた。
分厚い雲により日が陰った公園は、冷たい空気に覆いつくされ、人影もほとんどない。
「他の人は、きっとクリスマスだから参加しないんじゃない?狩野くんだって、私のことを一番に考えてくれてたら、その話を受けたりしないはずよ。」
遼太郎の中では、彩恵を後回しにする気などさらさらなかったが、彩恵と同じように一緒に過ごすクリスマスを大事にする気持ちがあれば、話を受ける前に気が付いたはずだ。
「……ごめん。」
自分の不実さに、自分でも嫌になる。
でも、自分にとっては、ラグビースクールの合宿に行くことだって、大事なことだった。