Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「『これから』じゃない!…合宿は断って、私と一緒にいて!!」


 彩恵は首を横に振って、今回ばかりは遼太郎の言葉を受け入れなかった。しかし、遼太郎の方も、この彩恵の懇願を受け入れられない事情がある。


「…ごめん。合宿は断れないよ。」

「いや!!断って!!」


 彩恵は涙をあふれさせながら、鋭い目で遼太郎を見上げ、その目を見据えた。怒りと悲しみで、唇が細かく震えている。


 遼太郎も、要求ばかりを突きつけて情況を理解してくれない彩恵に、少し苛立った。自分は、彩恵の意のままに動かねばならない下僕ではない。


「いくら茂森さんがそう言っても、俺は、断らないよ。」


 堅固な意思が漂う遼太郎の視線に、彩恵の表情はもっと険しくなる。


「…私は、狩野くんにとって、その程度の存在なんだ…。狩野くんは、私よりもラグビーの方が大事なんだ…。」

「そうじゃない。比べる対象なんかじゃないし、茂森さんのことは大事だって思ってる…。」

「本当に…?!本当にそう思ってる?」


 彩恵に念を押されて、遼太郎は口ごもった。彩恵の怒りを治めるために気休めを言っていることは、見透かされていた。

 これ以上、遼太郎は何も言えなくなる。逆に、そんなふうに何も答えない遼太郎に、彩恵はますます不安を募らせ、業を煮やす。


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