Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
公園の出入口を出て、駅の方へと走り去っていく後ろ姿を見送りながら、彩恵を傷つけてしまったことを痛感して、遼太郎の心は苦しくなった。
このまま、こんなことを続けていていいはずがない。
これ以上一緒にいると、もっと彩恵を傷つけてしまう。
いや、初めから、付き合ったりしてはいけなかった。
どんなに想いをかけてもらっても、それに応えられないことは、分かり切っていた。考えてみれば、自分はずいぶんひどいことを彩恵にしてしまった…。
こうすることがみのりから課された〝宿題〟だったとしても、自分は付き合ったふりをしていただけだった。〝宿題〟をするために、彩恵を利用したと言ってもいい。
そしてそれは、みのりの本意とする〝宿題〟ではなかっただろう。こんなに彩恵を傷つけてしまうことを、みのりが望んでいるはずがない。
――…茂森さんに、謝らなければ…。
また、謝ってばかりと、責められるだろうか?
それでも、謝らなければならないだろう。たとえ許してもらえなくても。
そうは思ったけれども、遼太郎は彩恵を追いかけることはせず、自転車の向きを駅とは反対方向に変えた。
今は、まだ話せない。あのように興奮した状態の彩恵に、もう『終わりにしよう』という話は――。