Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 みのりが試験監督をするのは、2科目目。問題を配布するのを手伝ってくれる若い男性講師とともに担当の教室へと向かう。初めて入試業務に当たるこの男性講師はちょっと頼りなくて、みのりはなんとなく心許ない。
 ……でも、考えてみれば、みのりが誰よりも頼もしいと思う遼太郎は、この講師よりもずっと若かった。


 手分けをして問題用紙と解答用紙を配り終えると、試験が開始された。5分間が経って、ここで男性講師は教室を出ていく。みのりは気を取り直して、試験問題に取り組む受験生たちの様子を監督し始めた。


 三年前、遼太郎もこうやってどこかの教室で、高校入試を受験した。遼太郎だけでなく、二俣や宇佐美……あの3年1組の面々も。その時、みのりも講師としてこの芳野高校に勤務していたので、同じ場にいて同じ緊張感を共有していたはずだ。

 一旦はこの芳野高校を離れたみのりが、正採用となり再びこの高校で働くことになったのも、やはり巡り合わせだったのだと思う。
 遼太郎が日本史を選択して、みのりがあの3年1組のクラスの授業に行くようになったのも。そして、折しも、不倫関係を続けていた石原と別れる決心をしたのも。すべては、遼太郎へと導かれるための布石だったように思われる。


< 3 / 775 >

この作品をシェア

pagetop