Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 みのりはその試練で鍛えられた心で、自分を好きになってくれた…。

 その想いは紛れもなく本物だ。


 そう思うと遼太郎の心は震えたが、同時に、みのりが与えてくれる居心地の良さに浸り、知らない内に甘えていた自分も、彩恵と同じく未熟な存在なんだと痛感する。
 そんな未熟な自分だから、あんなふうに彩恵を傷つけてしまった。


 みのりの想いの深さと自分の未熟さと…。
 それに気づかせてくれただけでも、彩恵には感謝したいと思った。
 それだけではない。この数か月間、彩恵と一緒にいた中で経験できたことはたくさんある。それは、〝みのり〟という優しいぬるま湯に浸かっていては得られなかったことだ。

 遼太郎にそれを教えてくれる代わりに、彩恵は辛い感情を味わわねばならなかった。


――やっぱりちゃんと、茂森さんには謝らないと…。


 東京へ戻って大学が始まったら、真っ先に彩恵に謝ってケジメを付けようと、遼太郎は決心した。




 大学が再開されて、いつものように遼太郎が自転車で登校していると、大学に到着する少し前で、歩いている樫原と出会った。


「狩野くん!明けましておめでとう~♪」


 まるでずっと会っていなかった恋人にでも再会したかのような、樫原の屈託のない嬉しそうな笑顔。


< 302 / 775 >

この作品をシェア

pagetop