Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
樫原が走り寄ってきたのと同時に、遼太郎も自転車から降りて歩き出す。
「明けましておめでとう。今年もよろしく。」
遼太郎がそう言うと、
「…うん!こちらこそよろしく♡」
と、樫原はもっと顔を輝かせた。
そして楽しそうに、気さくな会話を始めてくれる。
「狩野くんは帰省してたんだよね?初詣とか行った?」
「ああ、ラグビー部のOB会で、ウォーミングアップを兼ねて。」
「ウォーミングアップ?」
「高校の近くの神社、階段が100段以上あるから、そこを一気に駆け上がるといい運動になるんだ。」
「なるほど~。」
そんな会話をしながら、前方に目を移した樫原の視線が、ある場所に止まって動かなくなった。
大学の正門前で、多くの学生が行き交う中、樫原は足まで止めて視線の先を確かめている。
「どうかした?」
樫原の不自然な動きが気になった遼太郎も、一緒になって樫原の視線をたどった。
視線の先には、腕を組んだり、頭をなでたり、肩を抱いたり、朝だというのにイチャついているカップルがいる。そのカップルの態度が樫原の目に余るのか…と、遼太郎は思ったのだが…。
女の子の方が着ている、見覚えのある浅い緑のコートの色…。
近づいてくるカップルから、遼太郎も目を離せなくなった。