Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 樫原が走り寄ってきたのと同時に、遼太郎も自転車から降りて歩き出す。


「明けましておめでとう。今年もよろしく。」


 遼太郎がそう言うと、


「…うん!こちらこそよろしく♡」


と、樫原はもっと顔を輝かせた。
 そして楽しそうに、気さくな会話を始めてくれる。


「狩野くんは帰省してたんだよね?初詣とか行った?」

「ああ、ラグビー部のOB会で、ウォーミングアップを兼ねて。」

「ウォーミングアップ?」

「高校の近くの神社、階段が100段以上あるから、そこを一気に駆け上がるといい運動になるんだ。」

「なるほど~。」


 そんな会話をしながら、前方に目を移した樫原の視線が、ある場所に止まって動かなくなった。


 大学の正門前で、多くの学生が行き交う中、樫原は足まで止めて視線の先を確かめている。


「どうかした?」


 樫原の不自然な動きが気になった遼太郎も、一緒になって樫原の視線をたどった。


 視線の先には、腕を組んだり、頭をなでたり、肩を抱いたり、朝だというのにイチャついているカップルがいる。そのカップルの態度が樫原の目に余るのか…と、遼太郎は思ったのだが…。

 女の子の方が着ている、見覚えのある浅い緑のコートの色…。
 近づいてくるカップルから、遼太郎も目を離せなくなった。


< 303 / 775 >

この作品をシェア

pagetop