Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
だから、彩恵には、このことに関して罪悪感を持たないでいてほしい…。先ほどの彩恵のこわばった顔を思い出しながら、遼太郎はそう思った。
名残惜しそうに〝彼氏〟の手から離れた彩恵が、女友達と合流して、講義室の席に着く。
ノートの類いをバッグから出している時、スマホにメッセージが届いた。日常的な出来事に、彩恵はほとんど無意識にスマホを操作する。
文面を見て、彩恵の指の動きが止まった。唇を噛むと、瞳にジワリと涙がにじんでくる。
『今さらかもしれないけど、いろいろ辛い思いをさせてしまって、本当にごめん。あの彼氏と幸せになれることを祈ってます。』
あれほど彩恵が望んでいた遼太郎からのメッセージ…。
こんなふうにもらうなんて、本当に皮肉だった。
「狩野くんって…、ホント謝ってばかり…。」
隣にいる女友達に気が付かれないように、彩恵はつぶやいた。
それから、指を素早くスワイプさせて、赤い削除ボタンを表示させたが、タップはせずにそのままスマホをバッグへとしまった。