Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「もう!逃げ回らずに、ちょっと話くらい聞きなさいよ。」
「話って…!どうせ、部活に入れって話だろ?もう!うんざりなんだよなぁ~。」
そんな会話を聞きながら、みのりがようやく立ち上がり、その男子の顔をチラリと見上げた。
その瞬間、みのりは倒れた痛みもなくなり、自分の中の全てが止まった。心の琴線が弾かれて、息をするのも忘れる。
切なく愛しい記憶の中にある、あの切れ長の優しげな眼――。
「……もしかして、…狩野くん?」
みのりに名前を呼ばれて、その男子は目を丸くした。
「…何で、俺の名前知ってんの?」
初対面のはずだし、1年部の教員でもないみのりを、まじまじと見つめる。
「お兄さんの狩野くんから、4つ年下の弟がいるって聞いてたし、面影も似てるから。…ええと、『俊次』くんだったっけ?」
みのりがそう言ってニッコリ笑いかけると、優しく名前を呼ばれた俊次は、思わずみのりの笑顔に見入って言葉をなくした。
「そう!狩野さんの弟のくせに、ラグビー部に入らないって言ってるんだよ?みのりちゃん!」
愛が横から口を出すと、俊次は再び眉間に皺を寄せた。