Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
けれども、遼太郎の弟と関わりを持つことには、怖さもある。
俊次を見るたびに、その中にある遼太郎の面影を探すだろう。そして、その度に切ない心の疼きに耐えなければならないだろう。
せっかく平穏になりつつある自分の心の状態が、壊れてしまうのではないかと、みのりは少し怖かった。
それでも、かつて遼太郎の成長を見守っていたように、俊次の成長の助けになりたい。
それが、もう会うこともないけれども、遼太郎の喜びにもつながる――。
そう思うと、俊次にはやはりラグビー部に入ってもらいたいと、みのりも心から思った。
新年度になると新しい職員も入ってきて、3月のしっくりとなじんだ職員室から一変する。雰囲気も様変わりし、落ち着かなげにざわめいている。
特に強烈なキャラクターがいたら、なおさらだ。
こういう人間は、周りに醸し出す雰囲気のようなものがあって、自分を新しい環境に溶け込ませようとはしない。
「仲松先生!」
と、声をかけてきたこの伊納(いのう)という数学教師もそういう人間だった。
みのりより2つ年上のこの伊納は、いつもパリッとした三つ揃えのスーツを着て、髪もきちんとセットをし、細部まで身だしなみには気を遣っている。