Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「驚かせてしまってすみません…。でも、なかなかお会いできる機会もないし、ちょうど取材で近くまで来たので、ちょっとお顔を見に寄らせて頂きました。」
そう言いながら、蓮見はその言葉の通り、みのりの顔をじっと見つめた。
会う機会がなかったのは、みのりにその気がなかったからだ。あのお見合いをした後、何度か蓮見からの電話があったのにもかかわらず、みのりはことごとくそれらを無視した。
そんなみのりの失礼な態度など忘れ去ってしまっているかのように、蓮見は優しい表情でみのりを見つめてくれている。
けれども、ここは学校の正面玄関だ。そんな眼差しを注がれると、事務員たちからも訝しがられる。
みのりは落ち着かなげに首からかかる身分証を胸元でいじりながら、何とか〝何でもない知人〟を装おうとした。
「…蓮見さんは、お元気でした?」
みのりのこの一言に、蓮見はいっそう優しげに微笑む。
「はい。仕事で生活は不規則なんですが、何とか元気にやってます。…みのりさんは?」
「私も相変わらずです。病気をする暇もないほど、忙しくしています。」
「そうですか…。」
と、蓮見が頷くと、それ以上会話は弾むことなく途切れてしまった。