Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
いきなり声をかけられた二人は、不意を衝かれて目を丸くする。
「はい。頑張ってきます。」
辛うじて愛はそう返答したが、俊次は何も答えず、みのりの向かいに立つ蓮見から目を離せなかった。
生徒昇降口で靴を履き替えて、ラグビー部の活動が行われる第2グラウンドへ向かう途中、俊次が口を開く。
「あれ、みのりちゃんの彼氏かな…?」
「え…っ!彼氏?」
俊次からそう訊かれて、愛は戸惑ったような声を上げた。
そして、以前みのりが叶わない恋に切ない涙を流していたことを思い出して、考え込む。
どう見ても先ほどのみのりは、〝心の底から好きになった人〟と会っている雰囲気ではない。それに、仮に〝彼氏〟ならば、あんな風に玄関先で会ったりせずに、ちゃんとデートをするだろう。
「…いや、彼氏じゃないと思う…。」
はっきりした理由は解らないけれども、愛は確信していた。
「彼氏じゃないとしても、インテリな感じで背が高くって、すっげーイケメンだったな…。」
ポツリと放たれた俊次の言葉を訝って、愛はまじまじと俊次を見上げた。
確かにみのりの傍に立つ蓮見の姿は、知的で清廉で、綺麗な印象さえ受けるハンサムな大人の男だった。みのりの透き通るように可憐な美しさと相乗して、まるで二人の周りだけ異空間のように感じられた。