Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
けれども、遼太郎が道子のことが気にかかったのは、ずいぶん前のことだ。
遼太郎は大学まで自転車で通っている。2年生になったころから近道を覚え、そこを通るようになった。それは、人通りの少ない裏通り――。
夏になった頃、そこを男と歩く道子とすれ違った。思い返せば、それまでも出会っていたのかもしれないが、ようやく遼太郎が道子の顔を覚えた頃だった。
それから、たびたびそこで道子を見かけるようになる。
何度目かの遭遇の後、遼太郎はあることに気が付いた。見かけるたびに、道子が連れている男が違うということを。
そして、ある日、とうとう決定的な場面を目撃する。それは、道子がやはり違う男と連れ立って、うらぶれたラブホテルに入って行くところだった――。
それで遼太郎は、道子が不特定な男たちと関係を持っていると、すべてを覚ってしまった。
事実を知ってしまっても、知らないふりをすることはできた。けれども、その後、また違う男とホテルから出てくるところを見かけて、見るに見かねてしまった。
折しも、ゼミ室で道子と二人きりになる機会があった。
佐山など他の男だったら「クワバラ」とばかりに退散するシチュエーションだが、遼太郎は道子と向き直った。