Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「あんなこと、やめた方がいいと思います」
“あんなこと”を目撃されていたことを、道子自身も気が付いていたのだろう。道子は焦る様子もなく、ぷっくりとしたまぶたに挟まれた細い瞳で、遼太郎を見つめ返した。
「私がどこで何しようが、君にとやかく言われることじゃない。」
初めて聞くその声も、けっこうドスが効いている。
確かに道子の言う通りだが、遼太郎も思い切って言い出した以上、何とか道子にその行為の不道徳さを解ってほしかった。
「…どうして、あんなことするんですか?」
「どうしてって…。そりゃ、気持ちいいからよ。」
「………ぇ!?」
臆面もないあからさまな道子の言い様に、遼太郎は言葉を詰まらせて赤面した。それでも、気を取り直して、正論を道子にぶつける。
「でも、…それは、彼氏とするものであって、不特定の人とするものじゃないと思います。」
後輩のくせに、しかも初めて言葉を交わしているような間柄で、説教がましいことを言い出した遼太郎を、道子は不愉快そうに睨みつけた。
「なによ、あんた。私の彼氏でもないくせに。私のことなんて、どうでもいいでしょう?」
「…どうでもいいんなら、初めからこんなこと言いません。」