Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「その代り。『彼氏』がいるんだから、もうあんなことは絶対にやめてください。」
道子の視線が、戸惑うように遼太郎の優しげな表情の上を漂い、道子はしおらしく頷いた。
「……うん。わかった……。」
英語の講義が終わった後、こんな事の顛末を、遼太郎は佐山と樫原にかいつまんで説明した。
それを聞いても、彼らの中にわだかまる疑問は解消されない。理解できないのは、どうやって付き合うようになったか…ではなくて、どうして遼太郎は道子と付き合おうと思ったのか…ということだ。
「俺は、遼太郎がアイツのことが好きだなんて、到底思えないんだけど」
確かに佐山の言う通り、遼太郎は道子に対して、爪の先ほどの恋愛感情も持っていない。
遼太郎が心から想うのは、みのりだけだ。それは遼太郎の真理のようなもので、誰と付き合うことになっても、この真理は死ぬまで変わることはない。
でも、それは道子だってお互い様だ。道子は以前遼太郎の〝彼女〟だった彩恵のように、遼太郎に想いを募らせてはいない。
「もちろん…、好きではないけど…。でも、成り行き上、そうするしかなかったって言うか…。」
そんな風に言葉を詰まらせる遼太郎を、佐山は「バカ野郎」と言わんばかりの目つきで見ている。どうやら佐山にとって道子は、嫌いなタイプの女なのだろう。