Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 遼太郎の純粋な思いを聞きながら、道子は自分がどんどん惨めに思われてきて、次第に目の奥が熱くなってくる。

 そして、それが涙となって溢れてくる前に、自分を守る言葉の鎧をまとった。


「…そうね。狩野くんの言う通り、私だって、そうやって好きになってくれる人が抱いてくれたら、本当に幸せだと思う。…でも、誰が私のことをそんなふうに思ってくれる?現に狩野くんだって、一応私の『彼氏』ってことになってるけど、私のこと、これっぽっちも好きじゃないでしょう?」


 道子から自分の心を見透かされて、遼太郎はグッと言葉を詰まらせた。『これっぽっちも好きじゃない』どころか、さっきは『死んでも嫌だ』とまで思ってしまった。

 申し訳ないような目つきになって、遼太郎が道子を見つめると、道子も緊張が少し解けて息を抜いた。


「ずっと前は私だって…、狩野くんが言うみたいな、そんな恋愛がいつかできるって思ってた。普通の10代の女の子みたいに、私を好きになってくれる『彼氏』がほしいって思ってたし、普通に好きな人もいたのよ?」


 それを話し始める時、道子は落ち着かなげに唇を湿らせて、覚悟を決めたように見えた。

 遼太郎も、背もたれに預けていた体を離し、前のテーブルに腕をついて、道子の話に真剣に耳を傾けた。



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