Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜


 その異変を察知した遼太郎は、心配そうにみのりの様子を窺った。しかし、みのりはそんな遼太郎の視線にも気が付かず、宙を見つめ急に無口になってしまった。


 そうしている内にジェットコースターは動き始め、どんどん地上から離されていき、遊園地の隣にそびえていたビルの屋上が見下ろせるようになった。

 本来ならば、これから味わえる急降下にワクワクするところだが、遼太郎はみのりのことが気になって、楽しむどころではない。そして、みのりの方も、到底楽しんでいるという感じではない。

 そして、頂上部に到達して、とうとうみのりは我慢ができなくなった。両脇のガードを握りしめて、


「…遼ちゃん…!」


と、つぶやいた瞬間、ジェットコースターは轟音と共に一気に下り始めた。


 楽しげな奇声を伴いながらジェットコースターが走っていたのは、ものの数分。だけど、みのりには終わりのない、とてつもなく長い時間に感じられた。自分の体が自分ではないような、重力の方向が反転してしまったような感覚になって、みのりが気を失いかけた時、ようやくジェットコースターは止まってくれた。


 元いた場所に到着すると、乗り込んだ時とは反対側に降りることになる。

 遼太郎が先にヒラリと降りて、みのりもそれに続こうと思ったけれど、体に力が入らず立ち上がれない。


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