Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「そんな人、現れるはずがない。…こんなに醜い私のことなんて…、誰も本気で好きになってはくれないわ…。」


 頭の中に、あの高2の時の男子の声がまた聞こえてきて、道子は声を震わせて涙をこぼした。


 この根深いコンプレックスから道子が抜け出すのは、簡単なことではないのかもしれない…。そうは思ったけれども、遼太郎はもう投げ出すことは出来なかった。少なくとももう二度と、道子が名前も知らない男に、弄ばれてはならない。


「生まれ持った容姿はそう簡単に変えられないけど、心は変えられます。見た目以上に、心の美しさに惹かれる男だっているはずです。心が綺麗な人は人間として魅力的だと思います。心を磨いて光らせておけば、いつかきっと…、先輩もかけがえのない人に出会えます。」


 遼太郎の言葉には何の確証もなく、漠然とした未来を希望的に展望しただけのものだったけれども、信念に基づいている強さがあった。

 その清らかな響きは、道子の乾いた心に深く染み透って、じんわりと温かく広がっていく。


 道子の張りつめた表情が少し和らぐのを見て取って、遼太郎は柔らかい笑顔を作った。


「とにかく今は、…一緒に…、何か他に方法を考えましょう。『あんなこと』をしなくても、先輩の心を癒せる方法を…。」


 そんな優しい言葉を聞いて、道子の目にはもっと涙が溢れてくる。

 もう道子は、遼太郎の言うことを否定することも、自分の存在を否定することもできなかった。涙を拭いながら、ただ黙って頷くことしかできなかった。




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