Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「…そ、それじゃ、狩野くん。僕たちは先に講義室に行ってるから…。」
遼太郎と道子の話の邪魔になっては…と、樫原が気を利かせる。遼太郎も「悪い…」と言った面持ちで、佐山と樫原に目配せした。
しかし、こんなことはいつものことで、これまでもキャンパス内で出会ってしまった時には、遼太郎の意思とは関係なく、道子は彼を連れ去ってしまっていた。
「ううん。気を遣わなくても大丈夫。私たち、もう付き合ってないから。」
「……………?!」
「…えっ!?」
道子のその言葉に、佐山と樫原だけではなく、当の遼太郎も目を丸くして道子を凝視する。
3人からじっと見つめられて、道子は自分が放った言葉について説明する必要に駆られた。
少し考えて口をキュッと引き結ぶと、思い切って口を開く。
「…もう、狩野くんを解放してあげようと思って…。初めから狩野くんは、私のことが好きで付き合ってるわけじゃないって解ってたし、私との想いを育てていこうって思ってるわけじゃないことも解ってたし。」
自分の心を見事に言い当てられて、遼太郎は何も道子に言葉が返せず、神妙な顔をして道子の細い目を見つめた。
「だから…、これ以上好きでもない女と付き合わせたりしたら、可哀想でしょ?だからもう、終わりにしましょ。」