Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 道子は三人の中の遼太郎に向き直って、きちんと遼太郎の目を見上げてそう宣言した。

 佐山と樫原は、いきなり目の前で始まった〝別れ話〟を、息を呑んで見守っている。


「……でも……!」


 それまでの状況から、すんなりと了承するかに思えた遼太郎だったが、突然道子の提案に異を唱えた。


「…俺と別れたら、先輩はまた……。」


 また道子が〝あんなこと〟を繰り返すのではないかと、遼太郎は心配の方が先に立った。


 確かに道子の言うように、遼太郎は道子に対して特別な想いを抱いてはいなかったが、ただの友達とも言えない道子が身を落としてしまうのを、傍観してはいられなかった。


「…大丈夫よ、狩野くん。あの日、狩野くんに説教されて、私は目が覚めたの。…それに、こんな私のことを真剣に考えてくれる、狩野くんみたいな男の子もいるんだって分かったから。……私はもう、『あんなこと』は絶対にしない。」


 道子は低く静かな声で、遼太郎を説得するように、道子はそう断言する。
 その真剣な言葉と表情に、新しい自分に生まれ変わろうとしている道子の意志を、遼太郎は読み取った。


「……分かりました。先輩を、信じます。」


 遼太郎は頷いて道子を見つめ返し、ほのかに微笑んだ。


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