Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 完全に、腰が抜けてしまっていた。次に乗り込もうとする人が、戸惑ったような表情を浮かべて待っている。焦りは募るのにどうすることも出来ない。

 すると、ようやく遼太郎も、動けないみのりの様子に気づいてくれた。


「だ、大丈夫ですか?」


と、遼太郎は声をかけたが、もちろん大丈夫ではない。見れば判る。


 遼太郎は片足をジェットコースターへ戻し、みのりの両脇を掴んで降りる側へとヒョイッと持ち上げた。平らな床に足を付けられても、みのりの足はいうことをきかない。
 遼太郎は一瞬離しかけた手で、再びみのりの両腕を掴み、ゆっくりと出口の階段へと向かった。


「…何か、飲み物買ってきます…。」


 みのりをベンチに座らせた遼太郎が、そう言ってその場を離れようとしたが、みのりがそれを引き留めた。


「ううん。今飲んじゃうと、戻しちゃうかもしれないから…。ありがとう…。」


 遼太郎は何をしていいのか分からず途方にくれて、隣へ座ることもなくみのりを見守っている。みのりは未だ、真っ青なままだ。


「…すみません。俺が、あんなのに乗りたいなんていうから…。」


 遼太郎がそう言って謝ると、みのりは顔を上げて首を横に振った。


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