Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 3年のこの時期にゼミを変えることは、回り道をすることになるが、これからは〝夢〟が道子を後押ししてくれる。ちょっとした心の傷など気にならないくらい、道子はただ前を見据えて歩き続けることに夢中になった。


 そして、道子にそのきっかけを作ってあげた当の遼太郎は……。

 まだ、その未来はあまりにも混沌としていて…、どっちに向いて歩き出せばいいのか迷っているような状態だった。



 正月に合わせて帰省した遼太郎は、例年のようにラグビー部のOB会に参加し、数試合をこなして、いい汗を流した。

 第2グラウンドから、1年前と同じように明かりの灯る芳野高校の職員室を見上げる。


――……多分、あそこに先生もいる……。


 そこを仰ぐたびに、遼太郎は同じことを思った。


 遼太郎にとっては、遠い過去のことのように思われる高校生活。でも、みのりはあの頃と同じように今も変わらず、あの職員室の雑踏の中に身を置いている。


 今、みのりはどうしているのだろう…。
 さすがに結婚したとなれば、ラグビー部顧問の江口の口からそんな話も出てくるはずだが、みのりのことが話題に上ることもなかった。

 せめて元気でいるか、無理をしていないか…、みのりがどんな様子でいるのか、遼太郎は知りたいと思っていたが、それを誰にも訊き出せずにいた。


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