Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「『つい…』って、もしかして、好きでもない相手とやってしまった、ってことかよ?」
真実を衝かれて、二俣は何も返答が出来なくなる。遼太郎は呆れたように天を仰いでから、再び二俣へと視線を合わせた。
「……バカ野郎。」
二俣は情けない顔をして、遼太郎の静かな罵倒をその通りだと言わんばかりに、甘んじて受け入れた。
そんな二俣を見て、まだ沙希のことが好きなんだと、遼太郎は確信する。
かつては、みのりのことを好きになったり、ややもすると危うくなる二俣の沙希への想いだが、それは何があっても消し去ることのできない想いでもある。
誰よりも大事な存在だけれども、そこにいるのが当然過ぎて、二俣は沙希に対してキスをしたり…そんな素直な愛情表現ができないでいた。
女性に触れた経験のない二俣は、だからこそ、些細な誘惑の虜となってしまったのかもしれない。男の本能の方が先立って、どうでもいい相手と〝初めての体験〟をしてしまったことが、悔やまれてならないのだろう。
それでも、沙希にその事実は打ち明けないで、ずっと隠し通していれば、何事もなくこれまで同様〝遠距離恋愛〟を続けていけたはずなのに…。バカ正直な二俣は、その事実を自分の内側に隠しておけなかったのだ。