Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「……ふっくん。今ならまだ間に合うよ。本当に沙希ちゃんを失いたくないんなら、今、なりふり構わず謝って繋ぎ留めないと。」
気を取り直したように遼太郎が声をかけると、二俣は顔を上げて遼太郎と目を合わせたが、すぐにまたうつむき、首を横に振った。
「…この前も、沙希は何も言わずに、ずっと泣いてばかりだった…。きっと、許してくれないよ。」
「許してくれないからって、諦められるのか?何年か経って、沙希ちゃんが他の男と結婚してるところなんて見たくないだろう?今、手を離してしまうと、一生後悔することになるぞ。」
遼太郎の言葉が、二俣の胸に突き刺さった。
高3の冬、みのりに告白する時にあれだけ悩んで、二俣に相談していた遼太郎…。あの時と同じ人物と話をしているとは、二俣には到底思えなかった。その言葉には、それだけの重みと強さがあった。
遼太郎の後ろに浮かんで見える、みのりの姿…。
みのりを想い続けることで鍛えられ、培われた心から放たれる言葉は、同時に二俣の心を切なく震えさせた。
こうやって言ってくれている当の遼太郎は、その手の中にあった愛しい存在を失ってしまった。その胸の中にある想いを成就させたくても、どうやって努力すればいいのかさえ分からないのだ。