Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
とはいえ、どういう経緯で俊次がラグビー部に入ったのかは聞いていないが、今日の試合を見た限り、その恵まれた体格といい身のこなしといい、俊次には素質があると思っていた。
体を洗わなければ何もさせてもらえないので、とりあえず遼太郎は浴室へと向かう。
そして、シャワーで体にお湯をかける時、先ほど俊次が悶絶した痛みに歯を食いしばって堪えた。
試合の修羅場では、練習では付かないような擦り傷が無数に出来ている。その時は自覚せずに痛みさえ感じていなかった傷が、お湯をかけられると同時に一気に覚醒する。
先ほど真奈美はあんな風に言っていたが、この痛みだけは、経験した者でなければ解らないだろう。
普段、ラグビースクールでボールを触っているとはいえ、遼太郎にとって試合をするのは久しぶりだったので、この痛みを味わうのも久しぶりだった。
…それでも、いつも自分の中に潜在する澱のような〝痛み〟に比べたら、まだ心地良いとさえ思えてしまう。
風呂から上がってダイニングに向かい、先ほどテーブルの上に置きっぱなしだった年賀状を手に取る。
「兄ちゃん。」
その時、ソファに寝そべってテレビを見ていた俊次から、声をかけられた。